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私の祖父は泳ぎが上手い。よく一緒に山の川で遊んだ。 

いつものように対岸まで泳いで、元の岸へ戻ろうとした時のこと。
 
上流から何か泥の塊のようなものが流れてきた。 


それはあっという間に祖父を取り囲むと、泳いでいた祖父の頭が「とぷん」と消えた。 

私がハラハラしていると、すぐに祖父が顔を出したのでホッとした。 

岸に上がると祖父はやけに疲れた顔をし、口数も少なかった。 

祖父の横腹には手の痕のような痣ができていた。 

次の日、外で遊んでいると、田んぼの隅に妙なものを見つけた。 

泥まみれのビニールのようなものがグチャグチャになって潰れていた。
 
気になって祖父に「あれは何?」と尋ねると、 

「河童も人間様に負ければ、ああなるということだ」 

と言っただけで、あとは何も教えてくれなかった。 

そう言えば母に「川で遊んで水を濁すと、河童が怒って襲ってくる」と聞いたことがある。 

もしかすると、祖父はあの時水の中で、河童と戦って打ち負かしていたのだろうか――。 

そのグチャグチャしたものは、太陽の光で徐々に溶け、昼ごろにはすっかりなくなっていた。