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ア‥‥アム‥‥ 

なんだ、何の音だ? 
 
急に不可解な、こどものような高い声がどこからともなく聞こえてきた。 
 
カーステを更に絞り、少 しだけ開いた窓に耳をそばだてる。 

ア‥アモ‥ア‥ 

…声が近付いてきている。 

尚も霧は深い。急激に怖くなり、窓を閉めようとした 
 
「みつけた」

身体がカキンコキンに強張った。 
 
なんだ今の声。 
 
左の耳元で聞こえた。 
 
外じゃない。 
 
車内に何かいる。 
 
ア…ア……ア… 

こどもの声色だ。 
 
はっきり聞こえる。左だ。車の中だ。 

アモ…アム…アモ… 

なんだ。何を言ってるんだ。 
 
前を向いたまま、前方の霧から目をそらせない。 
 
曲面のワイドミラーをのぞけば、間違いなく声の主は見える。 
 
見えてしまう。 
 
やばい。見たくない。 

アモ。 

左耳のすぐそばで聞こえ、おれは気を失った。 

「おーい、大丈夫かー」 

外から知らんおっ さんに呼び掛けられ目を覚ました。 
 
時計を見ると八時半。 
 
とっくに夜は明け、霧も嘘のように晴れていた。 
 
どうやら後続車がおれが邪魔で通れないようだった。 
 
「大丈夫、すぐ行きますんで…すみません」 
 
言ってアクセルを踏み込む。 
 
明るい車内にはもちろん何もいない。 
 
夢でも見たかな、なに言ってんだかさっぱり意味わかんなかったし。 
 
ただ、根元まで燃え尽きた吸殻がフロアに転がってるのを見ると、夢とは思えなかった。 

到着したおれを大叔母たちはこころよく出迎えてくれた。 
 
電話で聞いていた雰囲気とはうってかわってよく喋る。 
 
大叔父の葬式が済んだばかりとは思えない元気っぷりだった。 
 
とりあえず線香をあげ、茶を淹れていただき会話に華をさかせる。 

「道、狭かったでしょう!朝には着くって聞いてて全然来ないもんだから、崖から落ちちゃったかと思ったわ!」 
 
「いやーそれがですねえ、変な体験しちゃいまして」 

今朝の出来事を話してみたが、途中から不安になってきた。 
 
にこにこしていた大叔母たちの表情が目に見えるように曇っていったからだ。 

「モリモリさまだ…」 
 
「まさか…じいさんが死んで終わったはずじゃ…」 

モリモリ?なんじゃそりゃ、ギャグか? 

「…あんた、もう帰り。帰ったらすぐ車は処分しなさい」 

なんだって?こないだ車高調入れたばっかりなのに何言ってんだ! 
それに来たばっかりで帰れだなんて・・・・

どういうことか理由を問いただすと、大叔母たちは青白い顔で色々と説明してくれ た。